この家の中のシックハウスは相当酷いことになっています。20分くらい滞在しましたが、既に目が充血して表面がヒリヒリと痛む症状が出ています。
実は、私には特殊なスキルがあります。ごく僅かな匂いも嗅ぎ分ける、犬並みの嗅覚を持っているのです。また子供の頃から化学物質過敏症があり、室内の汚染された空気、誰よりも敏感に反応することができるのです。
私には、このような特異体質がある為、この家のシックハウスに気づくことができますが、多くの方は少し変な臭いがするといった程度にしか感じませんので、恐らくこの家にシックハウスに気付かないまま住み続けることができるかも知れません。
シックハウスが恐ろしいのは、多くの方がその家の室内が、有害な揮発性科学物質に汚染されていることに気がつかぬまま、ずっとそこで暮らし続けてしまうことです。
多くの化学物質に晒された身体は、やがて様々な体調不良を引き起こします。また、化学物質に感作してしまうと、住宅建材以外でも、揮発性の化学物質に敏感になってしまう化学物質過敏症に、状態が移行してしまうかも知れません。
そのような体調不良で、皆さんは様々な病院を受診しますが、検査をしても顕著な異常は見つかりません。実際に、多くの方が病院を転々とし、様々な治療を受けますが、効果が得られないという状況に陥ってしまいます。
最終的には、ストレスや心の病気と医師から言われ、周囲にはその辛さが理解されないまま心身を酷く病んでしまうのです。こうしてシックハウスの悲劇が起こってしまいます。
私は、鍼灸師として治療院を営んでいます。これはある女性の患者さんに起きたシックハウスにまつわるエピソードです。
彼女は、私の治療院を受診した理由は、目が非常に乾く、瞼が下がってくる、すぐに疲れてしまう、夜中々眠れない、胃腸の調子が悪い等、眼精疲労を中心とした自律神経失調症が原因で鍼治療を希望して受診されました。
私が治療を行うと、数日間は調子が良いのですが、しばらくすると、また元の悪い状態に戻ってしまいます。様々な病院で、これまで治療を受けましたが、多くの治療で、効果が得られない状態でした。正に、八方塞がりの状態でした。
ところがある時、彼女を治療していると、彼女の髪の毛や身体から気になる臭いがするようになったのです。
私は気付きました。彼女を長く苦しめている原因は、もしかしたらシックハウスかも知れない。彼女が住んでいる家が原因なのかも知れないと、気付いたのです。しかし、鍼治療を受けに来ているのに、彼女にシックハウスが原因ではないか、家が悪いのではないかというと、暗に不安を煽ってしまうことが考えられます。
その為、なかなか言い出せないでおりました。しかし、彼女の状態はどんどん悪くなり、日常生活もままならないほど、深刻な状況になってきました。そこで、彼女に生活状況について詳しく聞いてみました。彼女は旦那さんと結婚したばかりの新婚さんで、３か月前に新しい新居に引っ越したそうです。ただ引っ越したその後から様々な体調不良に見舞われるようになったということでした。
旦那さんからは、いつ治るんだと責められ、どこにも相談することができず、かなり追い込まれた状況になっていたそうです。私は何んとしても彼女の人生を守りたい、そう思い勇気を出して「もしかしたら、シックハウスが原因ではないか、家に問題があるのではないか」と彼女に伝えました。
そして、日本でも数少ないシックハウスを専門とするドクターの受診を勧め、その結果シックハウスが疑わしいという診断が得られました。
ご主人の理解も得ることができ、彼女は引っ越しを行いました。
シックハウスを攻略する大原則はその場に近づかない、その場から離れることです。
彼女は、シックハウスの無い安全な新居に引っ越した後、体調はみるみる良くなり、笑顔を取り戻すことができました。
私は、この治療経験から、もしかしたら世の中には、多くの方がシックハウスの状態にあり、それに気づかずに生活をしていく中で、様々な体調不良を起こしているのではないか、という思いに至ったのです。
シックハウスへの理解が難しいのは、不調を抱えている本人が何となく嫌な臭いがする、この家はおかしいと言っても、周りの方から理解を得られないことです。
有害な化学物質が揮発しているかどうか、その家にはシックハウスがあるかどうか、それを客観的に証明するのは非常に難しいことなのです。
そこで、家がシックハウスに汚染されているかどうか、客観的に調べる方法が３つあります。
次に、皆様に、その方法を紹介したいと思います。
1、揮発性化学物質簡易測定装置
こちらはAmazon等の通信販売で購入することができます。電源を入れると、数値のカウンターが表示されますので、この数値を見ることによって、ホルムアルデヒドが室内の空気中にどれだけ含有しているかを測定することができます。
高価な物になりますとホルムアルデヒドだけではなく、他のベンゼン、シチレン、エチレン等の様々な揮発性有害化学物質を測定することが可能な物もあります。
現在、こちらの測定機器は0.01ppmを示しています。ホルムアルデヒドに対する国の制限は、0.08ppm以下に揮発量を抑える必要があります。こちらの検査機器を部屋の中で持ち歩き、空気が淀んでいる所や少し臭いがするところに晒して下さい。この機械によって、ホルムアルデヒドがどれだけ揮発しているのか、簡易的ですが測定することができます。
2、ドクターシックハウス試験紙
こちらもAmazon等の通信販売で購入することが可能です。このパッケージの中には、リトマス試験紙のような小さな紙が入っております。その試験紙を気になる場所に紐で吊るしたり、置いたりして設置を行います。そして５時間から１５時間放置し、その後その試験紙の色の変色を見てみます。強く黄色く変色したところではホルムアルデヒド等によるシックハウスが強く出ているサインを示しています。
3、最も正確に室内のシックハウスの状態を分析できる室内の空気サンプリング採取科学検査
こちらは空気を採取する検査キットがありますので、そちらを使い室内の空気を採取して、それを専門機関に送り、科学的に分析してもらうという高度な科学検査です。専門家にその調査を依頼する方法があります。もしくは、自らがその検査キットをオーダーして、自分で室内の空気をサンプリング採取し、宅急便で研究機関に送り、その空気を解析してもらうというセルフサンプリング採取空気科学検査が可能です。
こちらの検査は非常に正確で、ホルムアルデヒド、アセドアルデヒド類、他のベンゼンや様々な有害な化学性揮発物質の空気中に含まれる含量、そして成分をデータ的に客観的に分析することが可能です。ただ空気を採取するのに少しテクニックがいるのと、費用が結構かかってしまうという欠点がありますので、どうしてもシックハウスかどうか？また。その正体を知りたいという方には、３つ目もお勧めです。
実際に、こちらの家の中をホルムアルデヒド簡易測定装置で数値を記録した動画を撮影致しました。また自分自身で空気のサンプルキットを使って採取し、それを研究機関に送る、そういったことを自分で行った動画も撮影しましたのでご興味のある方は是非ご覧になって下さい。
